ROKKAKUが現在取り揃えている箔は100種類以上。同じ色でも質感や硬さの違いなどがあるため、それらも含めると200種類以上になります。
#04
ROKKAKU Storyひと押しまでの道のりvol.2
〈デザインに最適な箔選び〉
「箔を押す」
たったそれだけで、箔押しは通常のインク印刷にはない凹凸や光沢によって紙の上を華やかにします。
しかし、“箔押し”と一口に言ってもそれが形になるまでには、デザイン、箔の選定、版の制作、プレス機の調整といくつもの工程があり、さまざまな思考や技術が随所に張り巡らされています。
箔の魅力を活かし、絵柄に一層の彩りを与える箔押しのプロセスとは。
きらびやかな商品に至るまでの、長く地道な工程をたどっていきましょう。
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デザインが決定したら、箔の選定へ。イメージに沿ったものを検討しつつ、幅広い選択肢を持ってデザインに最も適した箔を探るプロセスです。
箔によって質感や光沢が異なるため、箔の色の組み合わせだけでなく、全体的な印象を通して絵柄が魅力的に映えるものを考えていきます。
Index
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01
100種類以上の特徴を捉える
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02
見本帳というインスピレーションの海で漂う
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03
絵柄と箔、箔同士の相性を見る
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04
数十パターンを目で見て検証
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05
COMMENT
100種類以上の特徴を捉える
色の種類も幅広く、金ひとつにしても、赤みがかった金、青みがかった金、メタリックな金、ツヤの抑えた金、ホログラムの入った金など、選択肢が多様です。他にもパール、透明など個性的なものもあり、きらめきやツヤの表現もさまざま。それぞれの特徴を捉えつつ、絵柄に合う箔を選り分けていきます。
また、箔によっては硬さの違いがあり、硬い箔は抜きや小さい文字などの細かな表現に、柔らかい箔は接着しやすくベタ面が広い表現に向いています。そうした技術面も考慮しながら、膨大な数から少しずつ絞り込んでいきます。
見本帳というインスピレーションの海で漂う
取り揃えている100種類の他にも、箔の種類はまだまだ多く存在しており、国内外の製造メーカーによって新しい箔も開発されています。ROKKAKUでは、そうした各メーカーの箔見本帳を取り寄せて、それらも選択肢に入れて検討。ある程度箔のイメージを持ちつつも、箔の見本帳で実際の煌めきや質感を眺めながら、さらにインスピレーションを掻き立てていきます。
膨大にある箔の中から検討することは難儀ですが、絵柄に最適な箔を突き詰めるとともに、箔の表現の幅を常に広げるために、さまざまな選択肢から探ることは重要です。特殊な箔で一見汎用性が低そうなものでも、使い方次第でいろいろなデザインに合うこともあるため、そうした想定外があることも箔の面白さの一つと言えます。
絵柄と箔、箔同士の相性を見る
さまざまな箔を眺めてインスピレーションを膨らませたら、絵柄と箔の相性、箔同士の相性を冷静に見極めて判断していきます。箔一つ一つに固有の魅力がありますが、それぞれの個性を損なうことなく互いに際立つ組み合わせを考えるプロセスです。
箔には光沢がありますが、強く光を反射するものやツヤを抑えたものなど、明暗の差があります。すべての箔が明るいと色が飛んだ印象になり、反対にすべて暗いと色が沈んで見えるため、明暗のバランスを取ることが重要です。
また、箔押しをする部分の面積や線の細かさも、箔選びを左右します。例えば、小さい文字は視認性の観点から光沢を抑えた箔が適しているように思えますが、一つの箔の中に明暗差があるホログラム箔を使用すると、細い線でも多様な光の表現を生むことができます。
特殊な箔を一部分のみで使用することは贅沢かもしれませんが、細かいからこそ可能な表現もあるため、箔押しをする箇所一つ一つの見え方を確認しながら検討していきます。
数十パターンを目で見て検証
膨大な選択肢の中から細かな部分までシミュレーションするだけでも相当な時間を要しますが、それで終わりではありません。ある程度候補を絞った上で、さまざまなパターンを試作をしていきます。
現物サンプルを通して絵柄が最も映える箔を検証するだけでなく、選んだ箔でうまく絵柄が表現できるのか、実現可能性を確認する重要なプロセスです。箔によって表現の向き不向きがあるため、いくら経験則があっても、実際に押して検証するまでは箔を最終決定することはできません。
この検証では通常10パターン前後試作をしますが、試作を経てさらに検証を重ねることもあり、多いときには40パターンに上ることも。こうしたプロセスを踏むため、箔が一発で決まることはそうなく、一〜二ヶ月もの時間をかけて検討することもありますしていきます。
この箔の選定は、最終的な見栄えに直結するため、デザイナーだけでなく製造、営業担当など商品に関わるメンバー全員で話し合いながら慎重に判断していきます。箔を一つ選ぶまでに時間も労力もかかりますが、箔と向き合い続けるこのプロセスは、商品のクオリティを左右する重要な時間と言えるでしょう。
こだわりの詰まったデザインと箔が決まったら、それらを形にするべくプレス作業へと進みます。
COMMENT
最後に、膨大な箔と向き合い続けるデザイナーと製造担当のお二人からコメントをいただきました。
—— 箔選びにおいて大切にしていることは何ですか?
「箔選びは洋服の感覚で、何を着せたら一番デザインが喜ぶかを考えています。見本帳を見ながらいろいろな箔を眺めていると、インスピレーションが湧いてくるんです。そうやって発想を広げながら、最終的にはどれが手に取りたくなるか、ワクワクするかを大事にしていますね。使いやすい箔に偏るとデザインも一辺倒になってしまうので、なるべく幅を広げて箔の可能性を引き出せるようチャレンジしています」
—— 箔選びの魅力をお聞かせください。
「試作の段階では、デザイナーが選んだ箔の他に、実際にプレスをする製造オペレーターも箔を選んで検証しています。デザイナーからの指示どおりで間違いないという確認も含めつつ、はじめから厳密に絞り込みすぎずに、オペレーターとしての経験と視点でどういった表現がありえるか自由に考えるようにしています。箔の選定次第で、同じ絵柄でもさまざまな見え方をしてくれるので、いろいろなものを試す過程は発見にあふれていて楽しいですね」